スタイルアリーナは一般財団法人日本ファッション協会が運営しています。

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2020.05.30

コラムVol.128『“憧れ”から“身近”にシフトした、ハイブランド 前編』

  • Category FASHION

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ハイブランドの変革期「お金を使わない若者」

 

 エルメス、ルイ・ヴィトンなどに代表されるラグジュアリーなハイブランドはいつでも憧れの存在。職人技術に基づいた丁寧で繊細なモノづくりと、最新のデザインを取り入れたアイテムたちは、目で見ることだけでも楽しめる。そんなハイブランドやラグジュアリーブランドは、ここ2~3年で変化の時を迎えている。スタイルアリーナに掲載しているファッショニスタたちの中には、このハイブランドを身につけている人も多く見られるが、ヴィンテージショップや古着屋などで購入する人も多い。その為、ブティックでの直接購入には結びつかないこともある。そしてここ何年かにわたって問題視されてきたのが“若者のお金を使わない”ことによるブランド離れだ。

 

 多くのカジュアルブランドが似たような形のバッグや靴などを展開するだけの技術や感性を持ったことで、“わざわざ高いものを買わなくてもいい”という風潮も生まれ、1万円で1着より、1万円で2~3着を買うことを重視する若者が増えた。これだけ多くのファストファッションやプチプラなアイテムが増えれば当然の流れだろう。ハイブランドが存続していく為に、改革を起こすタイミングが巡ってきたとも言える。

 

デザイナーの交代がもたらしたターゲット層の変化

 

 そんな若者たちを取り込もうとハイブランドが実施した最初の改革はデザイナーの交代だ。この2年で多くのブランドがデザイナー、プロデューサー、ディレクターが変わった。その交代劇は後のブランドイメージを180度変えてしまうほど重大な出来事。下手をすればブランドの評判や価値すら落としかねない。そんなリスキーな交代が相次いだことで、多くのファッション業界関係者も驚きを隠せなかった。そんな中、行動を起こすのが早かったのは「ルイ・ヴィトン」で、より若い感性に近い人材を起用した。ハイブランド代表であるルイ・ヴィトンは、2011年からデザイナーを務めた「キム・ジョーンズ」から、2018年「ヴァージル・アブロー」へ交代。

 

 ヴァージルは建築業界で働きつつYouTubeの投稿が注目を集め、ファッション業界に参加し始めたという異色な経歴の持ち主で、ストリート出身のゲームチェンジャーだ。そのチャレンジャー精神もあって、FENDI にてカニエ・ウエストと一緒にインターンとして在籍し、その後二人ともファッションデザイナーとして活躍した。彼の現代のトレンドに合わせた変化への敏感さと、仕事ぶりを買ったルイ・ヴィトンのCEOが、元々交流のあった彼に連絡をして就任したと言われてる。今までにない黒人の起用はルイ・ヴィトンにとっても、ハイブランド界全体にとってもかなり異例なことで、世界中から注目を集めた。

 

後編に続く。

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