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2019.01.11

私の好きな "かたちと風景" ①世田谷美術館と用賀プロムナード

  • Category CULTURE

 

私の好きな景観 ①世田谷美術館と用賀プロムナード

 


内井昭蔵の設計で知られる世田谷美術館 (1985) と、用賀駅から世田谷美術館へのアプローチの役割を果たしている象設計集団による用賀プロムナード (1986)をご存知であろうか。

世田谷美術館は知っていても用賀プロムナードを知らない方は多いのではないだろうか。建築設計は、社会とどう向き合うのかということを考えることが仕事である。この地の住宅地の道路は、路上駐車による迷惑駐車が多く、そのことをデザインによって改善しようと試みたのが用賀プロムナードであった。

 

路上駐車されている舗装道路のアスファルトを剥がし、淡路島の黒い瓦を敷き、模様を描き、鬼瓦なども配置された。歩道や路肩には、ストリートファニチャーのような工作物や花壇、水路や橋などを設けて行った。道路の公園化に成功し、子どもたちの親水公園としても利用され、ところどころに設けられた路肩の工作物によって路上駐車は難しくなった。用賀プロムナードは、地域が抱えていた課題を建築家による道路のデザインで解決した例として評価されている。

 

用賀プロムナードの先にある世田谷美術館は、砧公園の一角に建つ。砧公園は1957年に開園した約39万㎡の規模を持つ公園である。設計時のコンセプトとして設定されたのは、「公園美術館」、「生活空間化」、「オープン化」である。

内井昭蔵は、砧公園の一部に建てる計画であったため、良質な居住環境と公園の緑地を一部失うことへの理解を得るために、美術館と公園内の緑地をどのように関係付けるかということに向き合いコンセプトを導き出した。建築と自然が馴染み、自然もまた建築によって生かされることを考え、美術館の高さと威圧感を抑えるために、一つの大きな建物を建てるのではなく、空間としては連続するものの小さな単位に分割し、そのことで公園内でも目立たない配置を実現している。内井は、区立公園は区民の生活の一部であるべきであり、美術というものは生活から生じたものなのだから、美術館の日常化ということを理想としていたようである。

 

象設計集団による道路と内井昭蔵による美術館。両者とも共通して社会と向き合い、建築デザインによって地域の課題を少しでも解決しようと取り組んでいたことがわかる。世田谷美術館までの道のりで建築家集団の思いを踏みし、住宅のリビングのようなゆったりとした落ち着きのある美術館の中で、なぜ良好な環境の中で豊かなひとときが楽しめるのかを感じていただきたい。

 

 

 

参考文献:松葉一清:東京現代建築ガイド 鹿島出版会 (1993)、新建築1986年7月号 新建築社 (1986)

 

 

 

 

 

博士(工学)、有限会社花野果 代表取締役

二村 悟

Satoru Nimura

受賞歴:O-CHAパイオニア学術研究奨励賞 受賞、第47回SDA賞 サインデザイン奨励賞・九州地区賞特別賞 受賞、第5回辻静雄食文化賞 受賞ほか

静岡県掛川市 (旧大東町) 生まれ。博士(工学) (東京大学)。
東海大学大学院博士課程前期修了。元・静岡県立大学食品栄養科学部 客員准教授。
現在は、有限会社花野果 代表取締役、専門学校ICSカレッジオブアーツ 非常勤講師、日本大学生物資源科学部森林資源科学科 研究員・非常勤講師、工学院大学総合研究所 客員研究員。

主な著書:水と生きる建築土木遺産 彰国社 2016、日本の産業遺産図鑑 平凡社 2014、食と建築土木 LIXIL出版 2013、図説台湾都市物語 河出書房新社 2010

花野果 HANAYAKA
https://tatemonoxxx.amebaownd.com/
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