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2018.09.07

<技〜waza Vol.6-3> 落語の魅力 PART 2 ③

  • Category CULTURE

 

< 技 - WAZAシリーズ 第6回 > 第三話

 

落語の魅力 PART2 ③

 

 さあ、前回に引き続き落語の魅力を「衣・食・住」から読み解いていくシリーズの今回は三回目となります。落語の「住」から見えてくる江戸の頃の人々の様子を今回はご紹介したいと思います。

 

落語の「住」

 

 三回シリーズのラストとなります今回は落語の「住」についてのご案内となります。

落語に出てくる住まいは大抵が「長屋」、あるいは「お店 (たな) 」と呼ばれる商家で、後は郭 (くるわ) や大名屋敷、旅の旅籠等々が少々といった所でしょうか。とくに「長屋もの」といわれている。一ジャンルを構成している「長屋」とその周辺につき今回はご紹介してみたいと思います。

 

 「長屋」という建物につきましてはほとんど説明の必要もないと思いますが、現在のアパートといった所で、一棟を仕切って数戸の部屋を設けた事から棟割り長屋、またはその設けた個数によって三軒長屋、五軒長屋等と呼称されていました。広さとしてはまちまちですが、小さなもので「九尺二間」といいますから今で言う「四畳半」くらいでしょうか。その当時の川柳に「九尺二間に過ぎたるものは紅の付いたる火吹き竹」というのがありますので、新婚所帯はその位の広さの所から始まるのが定番だったのでしょう。壁も薄く隣の住人の痴話喧嘩や赤ん坊の夜泣きが筒抜けになる事も往々にしてあったそうです。壁の薄い事から隣の秘密を知って始まるような咄が「野ざらし」「黄金餅」等あります。

 

 さてこの長屋にはもちろんオーナーである大家さんがいます。この大家さんの社会的地位がまた今の大家さんとは大きく違い、「町役人 (ちょうやくにん) 」と呼ばれ店子全員の管理や冠婚葬祭の世話等の面倒も取り仕切るような役目を勤めていたそうです。店子が旅行に出る時などはまず大家さんに届け出て、その旨を大家さんはお上に届け出る。そうして旅の手形がもらえるといった具合です。そのため、店子の連中には口うるさい大家の出てくる「小言幸兵衛」といった落語や、因業な大家がへこまされる「大工調べ」、店子の喧嘩を大家どうしが大岡越前に訴え出る「三方一両損」等、かなり重要な役回りで大家さんは登場する事となります。余談ですが、大家さんの収入には店子の納める「店賃 (家賃) 」の他にも (尾籠な話しで恐縮ですが) 長屋の共同便所の用便を「下肥 (しもごえ) 」として業者に売った上がりが以外とばかにならない収入として懐に入ったようです。

 

 長屋が当時の最小のコミュニティだとすると、そのまた集合体が町内という事になっています。多くの長屋を始めその地域に店を構える商家などの集まりがそれで、この地域の結びつきが今とは比べものにならないほど緊密である事が落語の世界からもみてとれます。お祭りの相談や地方信仰等の団体旅行、女郎買い遊びなど町内のイベントとして盛り上がった様子は「百川」「大山参り」「錦の袈裟」というような落語に見ることができます。また、この町内の有り難い所は町内じゅうが顔見知りである事からツケで買い物が出来たところでしょう。八百屋でも魚屋でもその他米、薪、炭など大抵の物は注文で配達をしてもらい、月末に支払いをすれば良いというこのシステムは長屋の貧乏所帯には特に有り難いものであったはずです。この掛け売りという商売法は「睨み返し」や「掛け取り」といった作品に必ず登場する「借金取り」を暮れの風物にまでのし上げました。日本人ならではの信用を重んじる気質が生んだ功績? ではないでしょうか。逆に現在は当たり前になっている安いから隣町の店に買い物に行くというような事は、それが分かってしまうと町内で嫌われてしまうくらい、同町内の結びつきは強かったようです。

 

 落語にはその昔のそういったコミュニティを大事にする世界が色濃く残っている部分が有り、人情や思いやりを分かり易く混ぜ込んだストーリーが沢山あります。現在、寂しさを感じたり、人間不信に陥ったりしているようなら、是非! 落語にお出かけ戴く事をお薦めして、今回はペンを置かせて戴きます。

 

(文 三遊亭小円楽)

噺家

三遊亭小円楽

Sanyutei Koenraku

昭和35年6月12日生まれ。昭和55年12月会社員を経て、五代目三遊亭円楽に入門、「三遊亭かつお」を名乗る。昭和58年10月1日「かつお」のまま二ッ目昇進。昭和63年3月1日三遊亭小円楽に改名し、真打昇進。平成3年7月には国立演芸場若手花形演芸会「銀賞」を受賞している。
趣味の映画鑑賞では、平成27年より日本ファッション協会のシネマ夢倶楽部推薦委員に就任、年間200本ペースで映画の試写に参加しており、日本で一番試写室にいる落語家と自負している。テニスでは落語テニス倶楽部総監督、その他シナリオライティングなども行っている。
特技は、長唄、端唄、サーカスや法事などの変わり種司会。
主な出演番組
日本テレビ「笑点」 アシスタント 昭和57~58年
江東ケーブルテレビ「見たい知りたい江東区」 平成4~7年
CM出演
千代田生命「スーパーグランプリ」
高橋酒造「白岳・電車編」2005年
出ばやし
「外記猿」「奴の行列」

三遊亭小円楽の館
http://www4.point.ne.jp/~koenraku/
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