スタイルアリーナは一般財団法人日本ファッション協会が運営しています。

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2019.07.09

コラムVol.110『ストリートファッション界を切り開いたスリット』

  • Category FASHION

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「あっという間に浸透したスリットファッション」

 

 2017年頃から街中で出始め、ファッション感度の高い人から見てもオシャレなデザインとして広まった「スリット」。現在では定番のデザインとして流通しているが、元々は民族服であるチャイナドレスから取り入れられた。とは言え、ファッションに取り込まれた当初のスリットスタイルは、ストリートのシーンでは日の目をみない存在であった。モード系やランウェイブランドがスリットを取り込むことが多く、ストリートとは相反する界隈となっていたのだ。

 

 しかしそこは、ブランドやアイテムに限らず様々なものを取り込み、進化させ、自分たち仕様に仕立てるのが得意なストリートファッション。あっという間にモード界の中でも最先端を走っていたスリットの存在を前面に出し、デザインに落とし込んだ。例えば女性ものならワンピースに、男性ものならジャケットなどの羽織だ。

 

 

 

「スリットの立ち位置」

 

 毎年、5〜6月に発表される秋冬コレクション。2019年にもスリットデザインが多く見られた。「クロエ」や「イッセイミヤケ」など、ストリートファッションにも愛される世界的ブランドも2019年A/Wはスリットデザインに注目。また、今ではどのブランドでも「定番デザイン」にまで浸透している。深めにスリットが入った物も多く見られ、「動きやすい」ことがデザインに落とし込まれていたスリットは、時代の変化とともに「セクシーで上品」という万人に求められる立ち位置へとその姿を変えた。

 

 華やぎや、その服の良さを出すために、スリットはなくてはならないデザイン。多くの時代をまたぎ、先人たちの作り上げてきたものは国、文化、固定概念の多くを超え、様々なものと融合し、これからも定番デザインとしてファッション界を牽引していくに違いない。

 

 

 

「2019年は深めのスリットとレイヤード」

 

 特に2018年秋頃から2019年にかけて、かなり増えたスリットのデザイン。中でも今年注目したいキーワードが「深め」と「レイヤード」の2つだろう。深めスリットの入ったスカートやワンピースに、デニムやスカートを重ねて着るレイヤードが定番になった。深めにスリットを入れることで、インパクトのある印象を作り出し、オシャレ度が簡単にアップする。そのためジャンルレスに広がり、年齢問わず挑戦しやすいアイテムとして各雑誌などでも取り上げられるほど。

 

 また、韓国系の服にもスリットデザインが増えたことで、一気に広がりを見せ、多くのものにスリットデザインが使われている。”ジャンルレスなデザイン”として韓国ファッションの影響を受けやすいティーンから広がり、現在では定着した。最近ではパンツの先に少しだけスリットの入った「プチスリット」も、日本のファッションブランドから展開され、大きな広がりを見せている。

 

 

 

 柔軟な思考と好奇心旺盛な若者たちのファッション心をくすぐり、民族衣装から今や定番のデザインにまで進化を遂げたスリット。時代が進むにつれ、自分を表現することが上手になったファッショニスタたちは、スリットデザインによってさらに自分のスタイルを確立させることだろう。

 

 そして定番となったスリットデザインにさらに新たな文化や思想を取り入れて、ファッションに革命を起こしてくれるのではないだろうか。その柔軟性と好奇心は、これから先のストリートファッションに、ストリートを愛するファッショニスタたちに大きな期待が寄せられる。

 

 

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