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2018.08.03

< WAZA - Craftsman work Vol.6-2> Charm of a rakugo PART 2-2

  • Category culture

 

< 技 - WAZAシリーズ 第6回 > 第二話

 

落語の魅力 PART2 ②

 

 さあ、前回に引き続き落語の魅力を「衣・食・住」から読み解いていくシリーズの今回は二回目となります。落語の「食」から見えてくる江戸の頃の人々の様子を今回はご紹介したいと思います。

 

落語の「食」

 

 今回は「食」と言うことで、食べ物の出てくる落語を上げてみましょう。「時そば」「うどんや」「目黒の秋刀魚」「黄金餅」「ねぎまの殿様」等々、ちょっと考えても切りがないほど出てまいります。その他にも呑んだり食べたりするシーンが有る咄は多々ありますので、ネタには困らない所ですが、ただ飲み食いするのではなく、その事自体が咄のテーマに密接に関わる数話について書かせて戴きたいと思います。

 よく「食文化」などと言うように、落語に出てくる食べ物は時に登場人物の趣向や文化、その頃の風習を明らかにするという点で興味深く語られています。「藪入り」という咄では幼い頃に奉公に出した一人息子が数年ぶりに家に一日だけの休みで帰ってくる。父親である主人公は息子が帰ったら (演者によって異なるが)「納豆・鰻・あべかわ餅・まぐろの刺身・かき氷・寄せ鍋」等息子の好物を残らず食べさせろと女房に言うくだりがある。たった一人の息子に何十人前にもなる (しかも夏も冬もごちゃ混ぜの) 料理を食べさせたいというナンセンスなセリフなのですが、ここに父親の息子を思う気持ちが込められていて心にしみる演出となっています。また、「藪入り」という当時の風習をよく表していると思う点は、年に二度の正月とお盆にあたるこの日には食べ過ぎて具合の悪くなった子供が本当に大勢出たという事実が物語っています。

次に、食べ過ぎといえば何といっても「そば清」という咄。この咄は今で言えば「フードファイト」物とでもいうジャンルに入るであろう一席で、あるそば屋で中年の男と町内の若い衆がそばの大食いの賭けをする。「ざる20枚」をさらりと食べて賭けに勝った男は、実は「そば清」という異名を持ち「ざる30枚」は楽に食べてしまう大食漢であることが発覚します。この事実に、騙された若い衆達は腹を立て、新たに「ざる50枚」の賭けを吹っかけるのですが・・ラストはいかにも落語らしい落ちが用意されています。娯楽のすくなかった当時、何かにつけて競ったり賭けたりしてストレス解消等に用いていた様子が見て取れますし、「そば」という商品が江戸っ子達の胃袋を満たす手軽で安価なファーストフードであった事も分かると思います。余談になりますが、この手の「そば (うどん) を食べる」という場面で良くお客様が拍手をしてくださいますが、昔の名人の言葉として「拍手をもらっているようじゃダメだ、そこにいるお客様が帰りにそばを食いたく成るような芸が本物だ」てな事を言ったとか? 言わないとか? 

 

 さて、江戸っ子が登場したところで他にも庶民感覚を反映した落語という意味で取り上げたいのが「目黒の秋刀魚」でしょうか。最近は「サンマ祭り」で皆さんにもお馴染みとなりました落語「目黒の秋刀魚」は庶民の食生活に無知であった殿様を笑う咄です。侍の絶大なる権勢に対する市井の人々の不満をこういった咄で憂さ晴らしをしていたのでしょう。余談になりますが、「目黒の秋刀魚」の台詞の中に「その頃の魚河岸は日本橋・・その当時の名物である房州秋刀魚を買い求め・・」という言葉が出てまいります。現在築地から豊洲に移転を検討中の魚河岸が、江戸時代には日本橋にあったという事や、この頃から房州 (現在の千葉県周辺) からくる秋刀魚が名物であった事等も垣間見えて面白いところでしょう。

 

 さあ、今回は落語の中に登場する食べ物の話しをさせて戴きました。少しは興味をお持ち戴けましたでしょうか? もし明日にでも寄席へお出かけ戴けましたら終演後、当日のネタに出てきた料理を食べてみたいなと思われたなら・・それはきっと良い落語を聞いたという事になるんじゃないでしょうか?

 

(文 三遊亭小円楽)

噺家

Sanyutei Koenraku

昭和35年6月12日生まれ。昭和55年12月会社員を経て、五代目三遊亭円楽に入門、「三遊亭かつお」を名乗る。昭和58年10月1日「かつお」のまま二ッ目昇進。昭和63年3月1日三遊亭小円楽に改名し、真打昇進。平成3年7月には国立演芸場若手花形演芸会「銀賞」を受賞している。
趣味の映画鑑賞では、平成27年より日本ファッション協会のシネマ夢倶楽部推薦委員に就任、年間200本ペースで映画の試写に参加しており、日本で一番試写室にいる落語家と自負している。テニスでは落語テニス倶楽部総監督、その他シナリオライティングなども行っている。
特技は、長唄、端唄、サーカスや法事などの変わり種司会。
主な出演番組
日本テレビ「笑点」 アシスタント 昭和57~58年
江東ケーブルテレビ「見たい知りたい江東区」 平成4~7年
CM出演
千代田生命「スーパーグランプリ」
高橋酒造「白岳・電車編」2005年
出ばやし
「外記猿」「奴の行列」

三遊亭小円楽の館
http://www4.point.ne.jp/~koenraku/
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