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2018.01.18

東京オリンピックへの光景 第一回「日本武道館」~神永の涙~

  • Category CULTURE

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「東京オリンピックへの光景」第一回 「日本武道館」~神永の涙~

 

 

東京の見慣れた光景も、そこに秘められた歴史、人間の生き様や顔を知った瞬間、にわかに輝く。

かつて東京オリンピックは国威発揚の場であったが、それぞれの命題を背負った人々にとっては人生をかけた大仕事の場になった。

 

1964年、日本武道館は、オリンピックの柔道競技会場として建設された。

法隆寺夢殿をイメージした八角形の建物は、間もなく、悲鳴に埋め尽くされた。

スポーツ競技は数々あるが、日本が負けることが許されないのが、柔道競技である。

当たり前の様に金メダルが期待された。

 

無差別級の決勝、日本は天才柔道家(179センチ、105キロ)として名高い神永昭夫、相手はオランダの巨漢(195センチ、120キロ)のアントン・ヘーシンクであった。試合開始から9分過ぎ(当時は10分制)、武道館は凍り付いた。神永のからだが、ヘーシンクに寝技で組み敷かれたのだ。柔道の基本精神は、柔よく剛を制す。しかし、ヘーシンクは剛と柔を兼ね備えた怪物であった。

 

テレビの前の視聴者、柔道関係者、みな呆然として涙を流し続けた。オリンピックの敗戦で、これほどの絶望感を与えた試合はその後もないと思われる。

 

しかし、もしこの試合で神永が勝利していたら、日本人しか勝てない競技としてオリンピックの種目から外されていた可能性を、のちにヘーシンクは指摘している。

 

日本武道館は改装工事に間もなく入るが、化粧直しが済んだところで、今度はいかなる名勝負を見せてくれるか、愉しみである。

 

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