スタイルアリーナは一般財団法人日本ファッション協会が運営しています。

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2017.05.09

コラムVol.52『刺繍に夢中なワケ』

  • Category FASHION

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今季のトレンドキーワードと「刺繍」

 

 今季のキーワードとして外せないのが「ボタニカル」。コレクションでは南国のトロピカル要素を取り入れた、リゾート感の強いルックが注目を浴びていた。数年前からこの季節になると出てきているモチーフだが、ストリートをよく観察してみると今年のボタニカルはこれまでと少し違う。以前は花柄などをプリントとして取り入れたアイテムだけだったが、今季は刺繍などのクラフト感あるアイテムが多数出てきている。10代後半~20代の若い世代を中心に、ストリートではリゾートスタイルよりも、エスニックスタイルのモチーフとして多く取り入れられているのが印象的だ。「刺繍アイテム」はカジュアルブランドの店頭や雑誌にもこぞって取り上げられているため、目にする機会も多いのではないだろうか。

 

 

引き続きトレンドの70年代スタイル

 

 エスニックスタイルといって連想されるのは70年代のヒッピーカルチャーだ。70年代スタイルは引き続きトレンドであり、刺繍アイテムだけでなく、ワイドのデニム、太めのサッシュベルト、サボなどの様々なアイテムに取り入れられた。刺繍のブラウスはいわゆる古着系のエスニックテイストの定番として人気があったが、今季の特徴としてはブラウス系だけでなく、スウェットやデニム、スカジャンなど様々なアイテムに使われている。中でもよく目にするのは、ふんわりとした袖に刺繍の入ったトップス。人気が加速した原因にはワイドパンツからスキニーデニムはもちろん、プリーツからミモレ丈のスカートまで幅広く合わせやすい点が挙げられる。また、シンプルコーデでも刺繍アイテムを1点取り入れることで、“オシャレに決まる”というのもイマドキ女子達に受けているポイントである。

 

 

シンプルスタイルに変化の兆し

 

 見慣れたモノトーンコーデやコンサバスタイルの次の一手として、登場した「刺繍アイテム」。刺繍のクラフト感や華やかさは現代の彼女達には新鮮に映ったのかもしれない。刺繍だけでなく、今季のストライプやフルーツモチーフなどを見ていても、ここ数年のシンプルなスタイルの流れに変化の兆しが見えていると言えるだろう。今年の秋冬も1920年代スタイルのリバイバルがトレンドとして挙げられており、コーデュロイやベルベット、フリンジやファーなどのアイテムが流行るとされている。

 

 

 最後に一つ。今季はボタニカル柄をはじめ、自由の象徴の鳥などポジティブなモチーフを取り入れているものが多かった。その背景には昨今の国際情勢の不安が背景としてあり、その反対要素にあたる「楽園、リゾート」といったモチーフがでてきたと言われている。ファッションは時代を映す鏡であり、人々のこうありたい、という願望が体現化したものだということが改めて分かる。取り上げた70年代のエスニックタイルにしても、自由と博愛精神を大切にするヒッピーカルチャーの中で流行しており、人々の平和への願いが背景にあった。私達はほぼ無意識的に流行を取り入れながら生活をしているが、いつの時代もトレンドはその時代を表す一番身近な世相だということ。そういう意識を持ってトレンドアイテムを観察してみるのも面白いのではないだろうか。

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