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2016.07.18

< WAZA - Craftsman work 2nd > EDOKIRIKO

  • Category culture

 

 

< 技 - WAZAシリーズ 第2回 > 

江戸切子 伝統工芸士 大場 和十志さん

 

江戸切子~日常生活に身近な、生活に根ざした切子を創っていきたい

 

 江戸時代後期に制作された江戸切子は、昭和60年に東京都の伝統工芸品産業に指定、平成14年には国の伝統工芸品にも指定されるなど、いまや、江戸、東京ばかりでなく、日本を代表する伝統工芸品となっている。

 切子には江戸切子と薩摩切子があるが、デザインも、工法もほぼ同じである。江戸切子は、江戸時代から明治・大正を経て、その間、ガラス素材の研究や、クリスタルガラスの研磨法などが開発され、切子自体の品質も向上してきたが、その間も切子づくりは一貫して庶民の手により受け継がれてきた。一方、薩摩切子は幕末の薩摩藩主島津斉彬(なりあきら)公のもとに事業化されたが、薩英戦争でガラス工場が破壊されるなど、いったん途絶えてしまった。その後、地元の人々により再び復元され、現在、鹿児島を代表する伝統工芸品の地位を確立している。

 

 緻密な文様や加工が切子の美しさを出しているが、切子の製作工程は大きく分けて、次の6工程になる。

①【割り出し】カットの目安となる縦横の印をつける。

②【粗摺り】ダイアモンドホイールに水をつけながら硝子を削り、大まかなデザインを決めていく。

③【三番掛け】ダイアモンドホイールに水をつけながら粗摺りをもとに、より細かくなめらかなカットを施す。

④【石掛け】人工砥石に水をつけながら加工し、カット面をより滑らかに仕上げていく。

⑤【磨き】木盤や樹脂系パッド等に水溶きした研磨剤をつけてカット面の光沢を出す。薬品に浸して光沢を出す(酸磨き)方法もある。

⑥【バフ掛け】フェルトや綿など繊維の回転盤に研磨剤として酸化セリウムを水溶きしたものをつけ、磨きの仕上げをする。

(江戸切子協同組合のHPから抜粋)

 

 これだけの工程をこなすには、集中力と硝子の加工技術が必要となる。「商品としての価値が持てる切子をつくるには、4年から5年はかかる」という(大場硝子加工所社長で、伝統工芸士の大場和十志さん)。当然、生産量に比例して、1つの切子の値段も高くなるが、それでもきめ細かな美しいデザインにほれ込む人は多い。最近ではインバウンド消費が注目されるなか、目の肥えた訪日外国人の購入も増えている。

 

 切子の魅力は、固いガラスに精巧に刻まれた模様だ。その模様(文様)の種類は数多くあり、代表的なものだけでも、十数種類はある。

 ここに代表的な文様を順に紹介する。この中で一番オーソドックスな文様は八角籠目文 (はっかくかごめもん) だとのこと。このほか、次のような文様がある。

・六角籠目文 (ろっかくかごもめん)

・矢来文 (やらいもん)

・魚子文 (ななこもん)

・麻の葉文 (あさのはもん)

・七宝文 (しっぽうもん)

・菊繋ぎ文 (きくつなぎもん)

・菊籠目文 (きくかごめもん)

・菊花文 (きっかもん)

・笹の葉文 (ささのはもん)

・芯無し蜘蛛の巣文 (しんなしくものすもん)

・芯有り蜘蛛の巣文 (しんありくものすもん)

・亀甲文 (きっこうもん)

・花切子ぶどう (はなぎりこぶどう)

 このように切子は昔からあるが、特に一般の人に印象に残るようになったのは、切子のワイングラスが参加各国首脳に贈呈品として採用された2008年開催の洞爺湖サミットだろう。これ以降、切子は国内外で一段と注目を浴びるようになった。最近では、訪日外国人の増加により、江戸の伝統文化に興味を持つ外国人も確実に増えている。

 ここで、伝統ある切子を継承する若手作家の大場和十志さん(大場硝子加工所・代表・伝統工芸士)に話を聞いた。大場硝子加工所は昭和42年2月の創業で、大場さんは2代目社長。平成18年から父親から社長を受け継ぎ、同業の仲間とともに、親しまれる江戸切子を目指して日々創作活動に励んでいる。

 

<大場和十志さんへのインタビュー>

 

 

 

大場 和十志 profile

大場硝子加工所・代表・伝統工芸士

 

平成7年  切子職人として仕事を始める
平成18年 大場硝子加工所 2代目代表となる
平成21年 日本伝統工芸士 認定

受賞歴:
平成 9年 高岡クラフトコンペ入選
平成22年 江戸切子新作展「東京都産業労働局長賞」
平成22年 日本伝統工芸士会作品展「奨励賞」

 

 

 

 

 ・伝統工芸品としての切子についての考え方を伺います。

――個人的には切子を美術工芸品としてではなく、まず、手にとって楽しんでもらいたい。部屋のどこかに飾っておくのではなく、実際に普段の器として使ってもらいたい。切子は江戸時代から、多くの作家により、多くの作品が生まれてきましたが、現在の作家としては、ただ単に昔からの工法を守り受け継いでいくだけではダメだと思います。伝統技術を受け継いでいくことは重要ですが、自分なりに工夫してこれまでと少し違った味を出せるよう努力しています。

 

・商品としての切子を作れるようになったのはどのくらいですか?

――最初は父親の手伝いから始めて、1~2年くらいで簡単な細工ができるようになりました。商品としての販売できるような技術を身につけるには、4~5年はかかりました。

 

・1日でどのくらいの切子を創っていますか?

――簡単なデザインの切子で40~50個。複雑なデザインのものは1つくらいです。切子のデザインには基本的なものから、複雑なものまで数多くありますが、デザインなどは同業の若手作家と常時意見交換しています。また、お客様からの声も可能な限りひろい、作品づくりに生かすようにしています。

 

・実際に切子を購入してもらっている年齢層はどのようになっていますか?

――値段が高いということもあり、40歳以上のお客様が多いですね。最近では、日本企業と取引がある外国の方にも購入してもらっています。ただ、個人的には20代、30代の若い方にも使ってもらいたいし、切子というものを幅広い年齢層の方に知ってもらいたいと思っています。

 

・切子作家として、今後の抱負を聞かせてください。

――自分が親(先代社長)から受け継いできた技術、デザインを自分なりに工夫して、次の世代に渡していきたい。次世代の作家に向け形状やデザインを同業の若手といつも議論しています。江戸の伝統工芸品である切子は高価なものですが、より身近に、いつも使ってもらえるようPRしていきたいと思っています。

 

         

 

 

■江戸切子の作品 (画像提供:江戸切子協同組合)

   
         
オールドグラス (クリア)
 
オールドグラス (瑠璃)
 
ぐい呑み「宝冠」 (金赤)
大場 和十志 作
ぐい呑み「宝冠」 (瑠璃)
大場 和十志 作
一口ビールグラス (瑠璃)
 

 

 (文・加藤公明)

 

 

■ 大場硝子加工所

 

東京都江戸川区松島1-9-14

TEL. 03-3656-4687

 

江戸切子 大場硝子加工所 facebookページ

 

協力:江戸切子協同組合

 

 

 

 

 

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