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2019.05.16

My favorite "form and landscape" ⑥Temporary evacuation facility for tsunami

  • Category culture

 

私の好きな"かたちと風景" ⑥津波の一時避難施設

 

静岡県遠州灘沿岸は、地震時に津波が想定されている。今回紹介するのは、遠州灘に面した掛川市、袋井市の津波の一時避難施設である。津波の最大高さ予測は、掛川市13m、袋井市10mである。この地域の避難施設には複数の種類がある。①企業による既存の中層施設を利用した施設、②自治体の避難タワー、③特別養護老人ホームの避難施設、④地形利用、⑤人工の築山の利用である。

 

 

①遠州灘沿いの国道150号線より南側は、より海岸に近い。この場所は畑が多く、広い敷地が確保できるので企業も多い。避難タワーを新設する例もあるが、企業内の既存の中層施設を利用する例もある。既存施設に鉄骨造の外階段と屋上の手摺を設け、避難施設としている。敷地内に建つので、避難時に住民が蹴破ることのできる進入口を持つ。掛川市では、住民が早急に一時避難できるよう「津波発生時における津波避難施設の使用に関する協定」を企業等と締結し、住民の避難を助けている。

 

 

②掛川市菊浜には日本初のPCaPC工法で建てられた一時避難施設がある。工場生産 (プレキャスト=PCa) のプレストレスト・コンクリート (応力を加えたコンクリートで引張力にも強い=PC) を採用した工法で2013年3月に竣工した。避難場は、面積200㎡、海抜15mで、中央にはベンチと太陽発電による照明があり、勾配の緩い鉄骨造の階段が付く。

 

 

 

 

 

③最大の特徴は、緩傾斜のスロープが分棟の各棟から屋上に向けて整備されている点である。

 

 

 

 

 

 

 

 

④この地域は砂地で、近世から砂の飛散を防ぐソダ (砂防施設) で対策し、そこに自然に堆積した小高い丘をスカ山と呼ぶ。このスカ山を整備して避難場所としたわけである。浜野地区かぐら山は、頂部の海抜は22mで、富士山を望むことができる。平地が多い地域にあって、海を望むことができる希少な高さをもつ。

 

 

 

 

 

⑤人工の築山は命山と呼ばれる。袋井市には、県指定文化財の大野命山・中新田命山という築山がある。延宝8 (1680) 年の台風で甚大な被害を受けたことで築かれた避難場所で、この方法を現代的に引用している。中新田地区「きぼうの山」の頂部は海抜10m、2016年3月竣工である。

 

 

 

 

 

 

 現在、沿岸部には防潮堤の建設も進む。地形を活かした盛土で、風力発電施設に比べれば景観への影響は最小限に抑えられている。

 

 津波避難施設は、2011年の東日本大震災を受けてのものである。単純な塔状の姿だけでなく、複数のかたちと風景との関係がある。低層の住宅地に存在するので、本来の役割に加えて平時は居住する人々の目に新たな風景を提供する場ともなっている。ただ、すべての施設は国道150号線沿いなので、地域外の国道利用者にも効果的な伝達が不可欠であろう。

  

参考文献 : 静岡県の地震・津波対策(パンフレット)、静岡県危機管理部、

2016 一般社団法人プレストレスト・コンクリート建設業協会ホームページ

袋井の命山パンフレット、平成の命山パンフレット、

袋井市歴史文化館 掛川市の津波対策 避難基準

 


 

 

 

博士(工学)、有限会社花野果 代表取締役

Satoru Nimura

受賞歴:O-CHAパイオニア学術研究奨励賞 受賞、第47回SDA賞 サインデザイン奨励賞・九州地区賞特別賞 受賞、第5回辻静雄食文化賞 受賞ほか

静岡県掛川市 (旧大東町) 生まれ。博士(工学) (東京大学)。
東海大学大学院博士課程前期修了。元・静岡県立大学食品栄養科学部 客員准教授。
現在は、有限会社花野果 代表取締役、専門学校ICSカレッジオブアーツ 非常勤講師、日本大学生物資源科学部森林資源科学科 研究員・非常勤講師、工学院大学総合研究所 客員研究員。

主な著書:水と生きる建築土木遺産 彰国社 2016、日本の産業遺産図鑑 平凡社 2014、食と建築土木 LIXIL出版 2013、図説台湾都市物語 河出書房新社 2010

花野果 HANAYAKA
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